「最近、朝起きると、なんだかすっきりしない……。睡眠の質を高める方法を知りたい」
そんな風に感じている方も多いのではないでしょうか。
タイパ(時間帯効果)を重視する人が増えていますが、生産的な生活を送るために、良質な睡眠は欠かせません。
睡眠の質が低下すると、集中力が低下したり体調を崩したりして、仕事や勉強に悪影響を及ぼします。
この記事では、パフォーマンス向上や精神の安定を実現したい方に向けて、「睡眠の質を高める方法」を解説します。
限られた時間を最大限に有効活用するために、しっかり熟睡して、充実した毎日を過ごせるようになりましょう。
1. なぜ睡眠の質を高めることが重要なのか
最初に、なぜ睡眠の質が重要なのか、十分に認識しておきましょう。
重要性を理解しているほど、睡眠の質を高める取り組みに対して、本気で集中できるからです。
1-1. 睡眠は人生のあらゆる側面に影響する
端的にいえば、睡眠は、人生のあらゆる側面に影響を与えています。
睡眠は生活習慣の一部であるとともに、神経系・免疫系・内分泌系などの機能と深く関わっており、健康にとって欠かせないものです。
厚生労働省の資料には、
〈睡眠不足や睡眠障害等の睡眠の問題は、疲労感をもたらし、情緒を不安定にし、適切な判断力を鈍らせるなど、生活の質に大きく影響します〉
と書かれています。
言い換えれば、きちんと眠れなければ、生活の質が落ちてしまうのです。
1-2. 睡眠の質が低いことで起きる問題
具体的には、睡眠の質が悪いと、さまざまな病気になるリスクが高まります。
【睡眠がリスク要因となる問題】
・こころの病気 ・高血圧 ・心臓病 ・脳卒中 ・事故(事故の背景に睡眠の問題があることが多い) |
睡眠の質は、「精神」「身体」の双方に重要であるとわかります。
疲労感や集中力の低下、イライラ感、憂うつな気分などがひどくなれば、仕事や勉強、さらには人間関係にも影響が及びます。
意外なところでは、
〈睡眠の質が、肥満や体重管理に影響を及ぼす〉
ことを示唆する研究が出ています(出典:Greer et al., 2013)。
「ダイエットがうまくいかない」
と悩んでいるなら、原因は、睡眠かもしれないのです。
1-3. 睡眠の質が高い人は幸福感が高い
一方、良質な睡眠は「幸福感」や「人生への満足度」を高めるといえます。
実際に、
〈良い睡眠をとる人ほど、人生への満足度が高い〉
という研究データがあります(出典:Shin and Kim, 2018)。
同研究では、論文のまとめの部分で以下の趣旨が述べられています。
良い人生とは何でしょうか。
現代社会では、「良い睡眠」を、地位や収入など他の優先事項の下に押しやっている人が多いかもしれません。
しかし、私たちの研究は、この目立たない日常の習慣が、身体を回復させるだけでなく、心の人生観を高めることを示唆しています。
出典:Shin and Kim, 2018 を翻訳
あらためて睡眠の重要性を認識し、本腰を入れて、取り組んでいきましょう。
2. 睡眠の質を高めるための基本的な知識
本腰を入れて睡眠の質を上げるためには、先に「睡眠の仕組み」を知っておきましょう。
仕組みを知れば、流行り廃りの情報に惑わされることなく、何のために何をすべきか、自分で判断できるようになります。
とはいえ、学術的になると理解が難しいので、ここでは最低限知っておくべき基本事項をご紹介します。
2-1. 睡眠サイクル
睡眠は、一晩に4〜5回繰り返される「ノンレム睡眠 + レム睡眠」のサイクル(90〜120分)で構成されています。
睡眠サイクルは、「ノンレム睡眠」の深い眠りへと進行した後、「レム睡眠」に移行し、再びノンレム睡眠へ移行する……というパターンを繰り返しています。
イメージしやすくする例として、仮想現実(VR)のゲームを思い浮かべてみましょう。
ゲームのスタート時は、現実世界の操作や周囲にも注意が向いていて、浅いステージからスタートします。やがて、ゲームが進行するにつれ、より深いVRの世界へと進んでいきます。
私たちが毎晩眠るときにも、浅いステージからスタートして深い眠りのステージに入り、再び浅いステージに戻ってくる……というサイクルを繰り返しています。
“睡眠の質を上げる” とは、言い換えると、
「どれだけ深い眠りのステージまで行けるか?」
「浅いステージまでどう戻ってきて目覚めるか?」
です。
このイメージを大切にしましょう。
2-2. レム睡眠とノンレム睡眠の役割
「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」には、それぞれ役割があり、どちらも重要です。
ノンレム睡眠のほうが深い眠りのため、ノンレム睡眠が重視されてレム睡眠が軽視されることがありますが、それは適切ではありません。
それぞれの定義と役割を、整理しておきましょう。
2-2-1. レム睡眠:脳のリフレッシュ
「レム(REM)」は “Rapid Eye Movement(急速眼球運動)” の略で、眼球が活発に動く睡眠フェーズを指します。
レム睡眠は、おもに夢を見る時間帯です。レム睡眠中に、脳は新たな情報を整理し、記憶の統合や学習内容の定着が行われると考えられています。
たとえば、あるピアニストが新曲の練習をした後に寝ると、練習内容がレム睡眠中に整理され、次の日にはよりスムーズに演奏できるようになります。
あるいは仕事で、
「アイデア出しに行き詰まり、『続きは明日にしよう』と寝たところ、目覚めたときに答えが急に降りてきた」
といった経験がある人は、少なくないでしょう。これも、レム睡眠の効果といえます。
近年では、レム睡眠に関する研究が進んでいます。
「睡眠中の脳のリフレッシュ機構を解明」によれば、
〈レム睡眠中に脳の毛細血管の血流が上昇することで、栄養供給や老廃物除去などの物質交換が活性化している可能性〉
があり、
〈レム睡眠中は大脳皮質で活発な物質交換が行われ、脳がリフレッシュされている〉
と考えられると指摘されています。
出典:国立研究開発法人日本医療研究開発機構「睡眠中の脳のリフレッシュ機構を解明」
2-2-2. ノンレム睡眠:身体のリカバリー
前述のレム睡眠は、「脳のリフレッシュ」と深く関係していることがうかがえます。
一方、ノンレム睡眠は「身体のリカバリー」と深く関係するフェーズです。
たとえば、運動選手が筋トレをした後に、ノンレム睡眠を経ると、筋肉が再生して疲労が回復します。
ノンレム睡眠は、身体の修復とエネルギーの補給にとって重要です。
とくに、深いノンレム睡眠であるステージ4(スローウェーブスリープ)では、細胞の再生・免疫の機能の強化・エネルギーの充足などが行われます。
【参考:ノンレム睡眠のステージ】
ノンレム睡眠は睡眠の深さ(脳波の活動性)によってステージ1~4(浅い→深い)の4段階に分けられます。ステージ1では頭蓋頂一過性鋭波、2では睡眠紡錘波およびK複合、3、4では高振幅徐波が出現します。ステージ3、4の段階は徐波睡眠(slow wave sleep, SWS)とよばれます。
先ほど、「どれだけ深い眠りのステージまで行けるか?」が大切、というお話をしました。
単にノンレム睡眠をとるだけでなく、ステージ1〜4(浅い→深い)の一番深い段階までたどり着くことで、睡眠の質が向上するのです。
3. 睡眠の質を高める具体的な8つの方法
ここまでに解説した睡眠サイクルの念頭に置きながら、ここからは具体的な方法を解説していきます。
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基本的な事項からマニアックなテクニックまで網羅していますが、できれば全部を実行するつもりで、読み進めてみてください。
3-1. アルコール・ニコチン・カフェインを控える
1つめの方法は「アルコール・ニコチン・カフェインを控える」です。
これらが「睡眠にとってよくないことはわかっていても、やめられない」という方は、以下の図をご覧ください。
なぜ、アルコール・ニコチン・カフェインを控える必要があるのかといえば、覚醒作用があるためです。
睡眠の質を高めるためには、ノンレム睡眠のステージ4を目指して、深い眠りを実現していきたいのですが、覚醒作用を持つアルコール・ニコチン・カフェインは、逆方向に作用します。
アルコール・ニコチン・カフェインを控えるべきというと、
「就寝時間の、何時間前までなら、飲んでもOKですか?」
といった質問がよく出ます。
睡眠の質を追求するなら、一切やめるのがベストです。
なぜなら、摂取量や体質・体格などによって、成分が体内に残る時間はまちまちで、一概に「何時間前までならOK」とは断言できないためです。
もう少し細かく知りたい方は、[カフェイン 血中濃度 半減期]といった検索キーワードで検索をして、ご自身の状況に合った情報を収集してみてください。
たとえば、カフェインの場合、半減期が2〜8時間です。
個人差はありますが、カフェインの血中濃度(吸収され血液中に含まれる量)は摂取後30分~2時間程度で最大となり、半減期(効果が半分になる時間)は2~8時間と幅があります(子供や妊婦では、半減期がさらに延長します)。
出典:NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター「カフェインと睡眠 」
2〜8時間で効果が消失するわけではなく、“半分になる時間”という点にも、ご留意ください。
一切やめるのは難しいという方は、
「できるだけ減らす(量・回数)/できるだけ早い時間帯のみにする」
といった方向性で、努力しましょう。
3-2. メラトニンの分泌を最適化する
2つめの方法は「メラトニンの分泌を最適化する」です。
「メラトニン」は、睡眠・覚醒リズムの調整作用を持つホルモンです。脳に存在する「松果体」から分泌されていて、夜間に分泌が増加し、昼間には減少します。
夕方頃から徐々にメラトニンの分泌量が増えることで、私たちの体は睡眠に向けて準備をしていきます。
【メラトニンの作用】
・生体リズムを調節する ・脈拍・体温・血圧を低下させることによって自然な眠りを誘う |
端的にいえば、メラトニンには催眠作用があります。
先ほど「睡眠サイクル」について学びましたが、睡眠サイクルを整えるために、直接的なカギを握るのがメラトニンといっても過言ではありません。
参考:厚生労働省「メラトニン」
メラトニンの分泌を最適化させる具体的なアクションを、以下5つご紹介します。
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3-2-1. 朝に強い光を浴びる
まず、朝に強い光を浴びてください。
松果体は、目の網膜が受ける“光の量”のデータをもとに、メラトニンの分泌量を決めています。
メラトニンの分泌量は、
「日の出とともに目覚めて、日の入りとともに就寝する」
という、昔の人のような生活で最適化されます。
具体的には、
「朝、太陽の光が目に入ってから、15時間前後が経過しないと、メラトニンは分泌されない」
という性質があるのです。
たとえば、朝7時に光を浴びた場合、夜22時になるまでメラトニンは分泌されません。
この仕組みをよく理解して、起床したら強い光を浴びましょう。昼間はメラトニンの分泌をストップし、夜に十分に分泌できるようにするためです。
“強い光”の理想は、太陽の光(朝日)です。
起床したら、カーテンを開けたり、庭・ベランダに出たりして、朝日を浴びましょう。
朝日を浴びるのが難しい環境の場合、人工的に強い光を発する器具が販売されているので、利用するのも一案です。
Amazonなどで[高照度光療法]などと検索すると、ヒットします。
3-2-2. 夜の強い光を控える
先ほど述べたとおり、強い光を浴びてから15時間前後は、メラトニンが分泌されなくなります。
夜になり、就寝時間が近づいても強い光を浴びて過ごしていると、松果体は、
「昼間だから、眠くならないようにメラトニンの分泌を止めよう」
と誤作動してしまいます。
夜になったら、部屋の明るさを抑えるようにしてください。
スイッチを入れる電球の数を減らしたり、間接照明をうまく使ったりして、目(網膜)に強い光が入らないよう工夫しましょう。
【間接照明の例】
たとえば、「会社帰りに、強い照明のコンビニに立ち寄る」といった行動も、控えたほうが賢明です。
3-2-3. ブルーライトを控える
夜の強い光を控える際には、部屋の照明を落とすだけでは不十分で、「ブルーライト」に配慮する必要があります。
ブルーライトとは、青色として感じられる波長の光のことです。ほかの色の光以上に、メラトニン分泌を強く抑制します。
【参考:ブルーライトはメラトニン抑制が強い】
・雑誌「Newton」2012年11月号(1081150813)p54-55「”青い光”を目に入れないようにすると寝つきがよくなる」に、体内時計がメラトニンの分泌を制御することで身体の活動量が低下し眠くなるが、青色の光(波長460~470ナノメートル前後の光)が特にメラトニンの分泌を抑制し眠気をおさえるとの記載。
ブルーライトは、スマートフォンやパソコンなどのディスプレイから発生しているため、スマホやパソコンを見ていると、メラトニンが抑制されてしまいます。
「寝室にスマホを持ち込んで、眠れるまでスマホを見ている」という行為は、睡眠の質にとっては、最悪といわざるを得ません。
夕方以降は、できるだけブルーライトを遠ざける努力をしましょう。
やむを得ず、スマホやパソコンのディスプレイを見る場合には、ブルーライトをカットする画面フィルムやメガネの利用がおすすめです。
3-2-4. メラトニンの材料を食べる
メラトニンが体内で分泌されるためには、メラトニンの材料が必要です。
結論からいえば、「タンパク質を中心に、栄養バランスの取れた食事」を心掛けてください。
少しややこしくなりますが、その背景として、まずメラトニンの材料となるのは「セロトニン」です。
セロトニンは、精神を安定させるはたらきをする脳内の神経伝達物質で、セロトニンが低下すると、不安やうつ・パニック障害などの精神症状を引き起こすことが知られています。
参考:厚生労働省「セロトニン」
睡眠の質とは異なる文脈で、セロトニンの重要性を聞いたことがあるかもしれませんが、
「セロトニンは、メラトニンの材料」
という点で、セロトニンは睡眠にとって非常に重要な物質です。
そしてこのセロトニンが何から生成されるのかといえば、必須アミノ酸の「トリプトファン」というタンパク質です。
トリプトファンは、肉・魚・大豆製品など、タンパク質の多い食品から摂取できますので、タンパク質をしっかり摂取する食事がとても重要です。
しかしながら、体内で物質が生成されるメカニズムは、「材料さえ食べればいい」という単純なものではありません。
生成の過程では、多数の栄養素が複雑に関係し合っているため、「タンパク質をしっかり摂取したうえで、バランスよく食べる」ことが大切です。
食事内容の詳細まではここでは触れませんが、農林水産省の「「日本型食生活」のススメ」などを参考に、食事改善に取り組んでみてください。
【参考:日本型食生活で自己管理】
食生活の改善に慣れるまでは、プロテインの栄養補助食品(粉末やプロテインバーなど)や、マルチビタミンミネラルといったサプリメントを利用するのも、よい選択といえます。
3-2-5. サプリメントで摂取する
ここまでに解説した内容を実践できると、自然とメラトニンの分泌が最適化されるはずです。
それでも、なかなかうまくいかない場合には、「メラトニン」自体をサプリメントとして摂取する方法もあります。
ただし、メラトニンを含むサプリメントは、日本国内でも個人輸入はできますが、日本では医薬品としてのみ承認されています。市販では、入手できません。
メラトニンのサプリメントを扱っているクリニックにて、相談してみましょう。
3-3. コルチゾールの分泌を最適化する
3つめの方法は「コルチゾールの分泌を最適化する」です。
前述のメラトニンと並んで、生体リズムや睡眠サイクルに多大な影響を与えているのが、「コルチゾール」です。
コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンです。「ストレスホルモン」として知られ、ストレスが高まると、分泌量が増えることが知られています。
コルチゾールのポイントは、「血糖値や血圧を上げて覚醒を促す作用」があることです。催眠作用を持つメラトニンとは、逆のはたらきとなります。
ストレスによってコルチゾールが増えすぎると、覚醒作用によって眠りが浅くなることは、想像しやすいかと思います。
ただ、重要な点はもうひとつあり、コルチゾールには “起床の準備” をする役割があり、朝に分泌のピークを迎えるのです。
寝る前には、コルチゾールの分泌量が減っている必要がありますが、起きるときには増えていないと、起床するのがとてもつらくなります。
記事の前半で、
“睡眠の質を上げる” とは、言い換えると、
「どれだけ深い眠りのステージまで行けるか?」
「浅いステージまでどう戻ってきて目覚めるか?」
です。
と述べました。
深い眠りのステージから浅いステージまでスムーズに戻り、スッキリと気持ちよく目覚めるためには、コルチゾールが重要なのです。
3-3-1. ストレスをケアする
コルチゾールは、ストレスが高まると分泌量が過剰になって、バランスが崩れます。
よって、ストレスをケアすることが、コルチゾールの最適化につながります。
【ストレスをケアする方法の例】
・瞑想、ヨガ、深呼吸といったリラクゼーションのテクニックを習得する ・ハーブティやアロマオイルなどの自然療法を取り入れる ・ストレス源(ストレッサー)を取り除く努力をする ・森林浴や自然散策などで自然と触れる機会を増やす ・絵を描く、演奏する、小説を書くなどクリエイティブな活動をする ・適度な運動をする ・栄養バランスのとれた食事をする ・趣味など自分の好きなことをする時間を持つ ・専門家によるカウンセリングや心理療法を利用する |
どのような方法が最適かは、抱えているストレスのレベルや種類、それぞれの個性など状況によって異なります。
書籍などで体系的に学んでみるのも、おすすめです。
【書籍の例】
3-3-2. ビタミンCを積極的に取る
コルチゾールのバランスを整えるために、もうひとつできることが「ビタミンCの摂取」です。
コルチゾールの分泌には、大量のビタミンCが必要なためです。
ストレスが多く、コルチゾールが分泌されやすい生活をしている人ほど、ビタミンCを消耗しやすくなります。
【どのような食品からビタミンCを摂取できますか?】
果物と野菜がビタミンCの最もすぐれた供給源です。以下のようなさまざまな食品を食べることで、推奨量のビタミンCを摂取することができます:
・柑橘類(オレンジやグレープフルーツなど)およびそのジュース、赤ピーマン、緑ピーマン、キウイフルーツ。これらは多くのビタミンCを含みます。
・ビタミンCを含むその他の果物や野菜。ブロッコリー、イチゴ、カンタロープ・メロン、ベイクドポテト(焼いたじゃがいも)、トマトなど。
・ビタミンCが強化された果物および野菜。ビタミンCが食品に添加されているか確認するには、その製品の表示を確認してください。出典:厚生労働省eJIM「ビタミンC」
日頃からフルーツや野菜を取るように心掛けてください。ストレス過多の時期には、ビタミンCのサプリメントで、集中的に補給するのもおすすめです。
参考:財団法人日本食肉消費総合センター「ストレスにはビタミンCが効く?」
3-4. 体温を管理する
ここからは、メラトニンやコルチゾールが導く体内のはたらきを助ける(または邪魔しない)ためのテクニックを見ていきましょう。
4つめの方法としてご紹介するのは「体温を管理する」です。
夜になって、順調にメラトニンの分泌量が増えると、自然に眠気がやってきます。そのメカニズムで重要なのが「体温」です。
メラトニンは、性腺を抑制し、眠るための準備として深部体温を低下させます。深部体温が下がると、眠くなるのです。
メラトニンの導きのままに深部体温を下げ、眠る準備をするためには、寝る前や就寝中に体温を上げないように注意して過ごします。
3-4-1. 就寝前に体温の上がる行動をしない
具体的には、体温が上がる行動は、就寝の2時間前までには済ませておきましょう。
【体温が上がる行動の例】
・入浴 ・運動 ・食事、アルコールの摂取 |
ほかに、興奮したり怒ったりすることも、体温を上げてしまうためご注意ください。
3-4-2. 室温と湿度を適切に保つ
次に、寝室の室温と湿度を、快適に保つようにします。
厚生労働省が提唱する「健康づくりのための睡眠指針 2014」によると、適切な室温は、夏は高め・冬は低めとなるものの、《13~29℃》の範囲に収まるようにすることが、推奨されています。
感じ方に個人差はありますが、自分にとって快適な室温をキープするように心掛けてください。
室温に加えて、「湿度」にも注意しましょう。湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体温が下がりづらくなります。
同資料では、
〈同一の温度環境下では、高湿度になると覚醒が増加し、深睡眠が減少することが示されている〉
と書かれています。
3-4-3. 羽毛布団を使う
体温を適切に下げつつ、しかし冷えすぎないようにするためには、通気性のよい良質な寝具を使うことが大切です。
日本の高温多湿な気候では、とくに注意が必要なポイントといえます。
具体的には、「羽毛布団」を使うと、湿度・気温とも快適に維持しやすく、適切な体温をキープしやすくなります。
【高品質な羽毛布団は睡眠の質を向上させる】
ふるさと納税などを利用して、賢く良質な羽毛布団を取り寄せましょう。
3-5. 自然な静けさを確保する
5つめの方法は「自然な静けさを確保する」です。
「音」は、睡眠の質に大きく影響を与えます。
夜間の騒音は、〈45〜55dB程度であっても、不眠や夜間の覚醒が増加する〉ことが示されています(出典:健康づくりのための睡眠指針 2014)。
50dBは、エアコンの室外機や換気扇程度の音で、日常的によくあり得るレベルです。
以下のような対策により、静かな寝室を確保しましょう。
【防音対策の例】
・窓を閉めて外の騒音を遮断する ・防音ツールを導入する(防音カーテン、防音ガラス、壁の吸音材など) ・耳栓をする |
注意点としては、“極端な無音状態”では、逆に覚醒度が高まるケースがあることも、指摘されています。
暗く無音の実験室で過ごすなど感覚刺激が極端に少ない条件では、反対に覚醒度が高まり、物音などの些細な刺激が気になったり、不安や緊張が高まることが報告されており、注意が必要である。
完全な無音を目指すというよりは、「45dB以下の、自然に静かな空間を作る」ことを目標としてみましょう。
3-6. 枕やマットレスの選択を変える
6つめの方法は「枕やマットレスの選択を変える」です。
体への負担が少ない寝姿勢(寝相)を保つことのできる枕やマットレスは、ノンレム睡眠のステージ4を目指すために重要です。
枕やマットレスが身体に合っていないと、体の痛みや不快感、肩こり・首こり・腰痛などによって、深い眠りが妨げられてしまいます。
以下に、枕やマットレスの選び方のヒントを、厚生労働省のサイトより引用します。
【快眠できる枕の高さとは?】
具体的にはベッドマットや敷き布団と首の角度が約5度になるのが理想的といわれています。頸部のすき間の深さは人によって異なりますが(一般に1-6cm)、この深さに合った高さの枕を選ぶと首や肩への負担が少なく眠りやすいといわれています。頸部のすき間の深さに合わない枕(高すぎる又は低すぎる枕)を選ぶと、首や肩・胸の筋肉に負担がかかり、呼吸がしにくく寝心地がわるくなります。
【「ベッドマット・敷き布団」は適度に硬い方がよい】
私たちの姿勢は、後頭部から首・胸にかけてと胸から腰にかけて、背骨が2つのS字カーブを描くようになっています。自然な立ち姿勢のときの腰部S字カーブのすき間は4-6cmですが、寝た姿勢でいちばん体への負担が少ないのは、すき間が2~3cmのときです。
ベッドマットや敷き布団が柔らかすぎる場合には、腰部と胸部が深く沈みこんでS字カーブのすき間が大きくなり、眠りにくいだけでなく腰痛の原因にもなります。反対に硬すぎると骨があたり痛みを生じる、血流が妨げられるなど熟睡できなくなります。したがってベッドマットや敷き布団には適度な硬さが必要であることがいえます。2つのS字カーブをバランス良く支えられる、自分にとって楽で快適な寝相を保ちやすいものが良いといえます。
どの枕やマットレスが自分にとって合うかは、自分の体形によって変わるため、専門店で試用したうえで選択するのが理想です。
地元の寝具店などで相談してみましょう。
3-7. 日中の活動量を増やす(運動する)
7つめの方法は「日中の活動量を増やす(運動する)」です。
〈入眠前の覚醒時間の長さ、覚醒中の身体運動量、精神負荷量が増すとノンレム睡眠も長くなる(深くなる)〉
といわれています(出典:厚生労働省「ノンレム睡眠」)。
日中の覚醒度が低く、ダラダラと過ごした日は、ノンレム睡眠が深くなりにくいということです。
しっかり覚醒して、身体運動量や精神負荷量を増やすことが、ノンレム睡眠のステージ4までたどり着くために必要となります。
「忙しくて、ランニングやジムに行く時間を取れない」という方には、HIIT(高強度インターバルトレーニング)と呼ばれるトレーニングがおすすめです。
HIITは、高負荷の運動と小休憩を繰り返すトレーニング法で、(20秒の運動 + 10秒のインターバル) × 8セット = 《4分》という短時間でも効果が見込めます。
具体的なやり方は、YouTubeで[HIIT]と検索すると、見ながら一緒にできる動画が数多くUPされています。自分に合いそうなトレーナーやコンセプトの動画を見つけて、実践してみましょう。
注意点として、HIITを実践すると体温が上昇するため、寝る前は避けてください。寝る2時間前まで、できれば午前中や日中のうちに、済ませるようにします。
3-8. ウェアラブルデバイスを活用する
8つめの方法は「ウェアラブルデバイスを活用する」です。
ここまでにお伝えしてきた方法を実践した結果、睡眠がどのように変化したのか、明確に把握する方法があります。それが、ウェアラブルデバイス(身体に装着するデバイス、スマートウォッチなど)です。
以下は、代表的なウェアラブルデバイスである「Apple Watch」のイメージ画像です。
【Apple Watch】
【あなたが眠っても、眠らずに働きます。】
睡眠アプリは、あなたの睡眠を記録します。睡眠の目標を達成するために、iPhoneと連係して理想的なスケジュールや就寝前の習慣を作れるようにサポート。レム睡眠、コア睡眠、深い睡眠。それぞれの睡眠ステージにいた時間の長さも確認できます。目が覚めそうになったタイミングも一目瞭然。睡眠の傾向を見て、目標の達成具合をチェックすることもできます。できないことは、羊を数えることくらいです。
このように睡眠を可視化することで、成果が出ているのか・出ていないのか、深い眠りに到達するうえで何がボトルネックとなっているのか、具体的に把握できます。
改善に役立つのはもちろんですが、睡眠に対する興味関心が桁違いに高くなり、睡眠の質向上に対するモチベーションが高まるメリットがあります。
Apple以外にも、さまざまなメーカーから睡眠をモニタリングできるデバイスが発売されています。
⇒ 参考:Amazonで[スマートウォッチ 睡眠]と検索した結果
自分の好みや予算に合わせて、探してみましょう。
4. まとめ
本記事では「睡眠の質を高める方法」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
最初に、なぜ睡眠の質を高めることが重要なのか、解説しました。
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睡眠の質を高めるための基本的な知識として、以下を知っておきましょう。
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睡眠の質を高める具体的な7つの方法として、以下をご紹介しました。
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これらを、たとえば「1ヶ月は本気で睡眠の質向上に集中する」という具合に決めて、きっちり取り組んでみてください。
今までとは違う次元の、高い質の睡眠を経験できるはずです。
その経験を手がかりにしながら、「よりよく眠り、幸福感の高い人生」を実現していきましょう。
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