睡眠不足の危険性とは?病気リスクとチェックリスト・5つの改善策

「睡眠不足が続いて、毎日がツラい……」
「寝不足の状態が続いたら、本当に病気になってしまうのではないか?」

このような悩みを抱え、苦しんでいる方は少なくありません。

仕事・育児・勉強・ストレスなど、さまざまな理由で、多くの人が睡眠不足に悩まされています。

しかしながら、心身ともに安定して幸せな人生を歩むためには、質の高い睡眠が不可欠です。

この記事では、睡眠不足がもたらす深刻なリスクから、その改善に向けた具体的なアプローチまで、網羅的に解説します。

睡眠不足のメカニズムや有効な対策を知ることで、より健康で充実した日々を送る第一歩を踏み出しましょう。

1. 睡眠不足が続くとどうなる?その危険性

さっそく、「睡眠不足が続くと、どうなるの?」という疑問から、クリアにしていきましょう。

睡眠不足は、仕事・勉強の効率や精神の安定、ダイエット、身体的な健康など、多くの面に影響を与えます。

以下のポイントについて、解説します。

1. 睡眠不足が心身に与える悪影響
2. 睡眠不足は「心血管疾患」のリスクを高める
3. 睡眠不足で不安・抑うつが強まる
4. 睡眠不足はダイエットを難しくする

1-1. 睡眠不足が心身に与える悪影響

まず確認しておきたいのが、「睡眠不足が心身に与える悪影響」です。

睡眠不足は、短期的にも長期的にも、多くの悪影響を及ぼします。

短期的な影響としては、集中力の低下や判断力の喪失があります。

【短期的な影響】

・集中力の低下:集中力が低下すると、仕事や学業のパフォーマンスが落ちます。具体的には、誤字脱字が増える、計算ミスが多くなるなどが考えられます。

・判断力の喪失:判断力が落ちると、危険な状況での適切な行動が取れなくなります。たとえば、運転中に注意力が失われると、信号無視や急なハンドル操作が起きやすくなります。

・日中の強い眠気:日中に眠気が起きることで、実際に居眠りをしてしまったり、倦怠感や疲労感を感じたりします。

たとえば、子どもの場合では、睡眠不足からイライラ・多動・衝動行為などが見られること少なくありません。

出典:厚生労働省「睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響」

長期的な影響としては、さまざまな病気のリスクが増加します。

【長期的な影響】

心血管疾患のリスク向上:高血圧や動脈硬化など、心血管系の病気の発症率が上昇します。

気分障害のリスク向上:うつ病や不安障害など、精神的な健康問題が生じるリスクが増加します。

肥満のリスク向上:食欲を増進させるホルモンのバランスが崩れ、体重増加につながります。

それぞれの詳細は、以下に続きます。

1-2. 睡眠不足は「心血管疾患」のリスクを高める

睡眠不足と、とくに関係が深い病気として知られているのが「心血管疾患」です。心血管疾患は、心筋梗塞・狭心症・心不全・脳梗塞・大動脈解離などの総称です。

参考:大阪府「心筋梗塞等の心血管疾患」


出典:厚生労働省「睡眠と生活習慣病との深い関係」

睡眠不足が心血管疾患のリスクを高めるのは、睡眠不足によって、心血管疾患の原因となる肥満・高血圧・脂質異常症が引き起こされるためです。

多くの研究によって、睡眠障害が、生活習慣病の罹患リスクを高めて症状を悪化させることや、その発症メカニズムが明らかになりつつあります。

出典:厚生労働省「睡眠と生活習慣病との深い関係」

下図は、睡眠不足と、肥満や高血圧、糖尿病との関係を表したものです。

出典:厚生労働省「睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響」

以下のポイントが挙げられています。

・高血圧患者の40%に不眠あり

・糖尿病の60%に不眠あり

・不眠症では糖尿病リスクが1.5倍

・睡眠時間が短いと肥満になりやすい

まとめると、睡眠不足は高血圧・糖尿病・肥満・脂質異常症・生活習慣病と密接に関係しており、結果として、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患のリスクを増大させます。

1-3. 睡眠不足で不安・抑うつが強まる

次に知っておきたいのが、「不安や抑うつと、睡眠不足の関係性」です。

近年の研究では、睡眠不足は、不安障害や気分障害(うつ病)のリスクを高めると指摘されています。

2013年の国立精神・神経医療研究センター・三島和夫部長らの研究によれば、睡眠不足で不安・抑うつが強まる神経基盤が解明されています。

出典:国立精神・神経医療研究センター「国立精神・神経医療研究センター・三島和夫部長らの研究グループが、  睡眠不足で不安・抑うつが強まる神経基盤を解明」

上図のとおり、睡眠不足の状態では、制御機能が弱まり、扁桃体の活動が増加していることが示されています。

扁桃体は、脳内で「情動の中枢」とも呼ばれ、とくに“不安”や“恐怖”といった感情に深く関わっています。

睡眠不足によって扁桃体の活動が増加すれば、うつ病や不安障害のような精神疾患のリスクが高まるといえるのです。

参考:量子科学技術研究開発機構「感情の中枢である扁桃体におけるドーパミンの役割を解明」

1-4. 睡眠不足はダイエットを難しくする

最後に、「睡眠不足とダイエットの関係性」を確認しておきましょう。

先ほど、心血管疾患のリスクに関して解説した際に、睡眠不足は「肥満」のリスクを高めることに触れました。

具体的には、グレリン・レプチン・成長ホルモンの3つのホルモンが密接に関わっています。

出典:医師面接養成ナビ「健康管理 過重労働・睡眠負債による健康影響」

グレリン:胃から出る、食欲を亢進させるホルモン

レプチン:脂肪細胞から出る、食欲を抑制させるホルモン

成長ホルモン:脳から出る、代謝や体脂肪分解を促進するホルモン

ダイエットを成功させるためには、「グレリンを減らし、レプチンと成長ホルモンを増やす」ことが必要です。

しかしながら、睡眠不足の場合、これらが逆となってしまうのです。

出典:医師面接養成ナビ「健康管理 過重労働・睡眠負債による健康影響」

米国スタンフォード大学の調査では、以下が明らかとなっています。

・4時間睡眠を2日続けた場合、レプチンが18%減少し、グレリンは28%増加。

・睡眠5時間以下の人は8時間寝る人に比べ、レプチンは15.5%少なく、グレリンは14.9%多い。睡眠時間の少ないほうが肥満度や体重が増加した。

「ダイエットしなければと決意しても、つい食べてしまう」という場合、食べてしまう原因は、意志の弱さではなく、睡眠不足にある可能性が高いのです。

また、「成長ホルモン」に関しては、睡眠中に分泌が増加するため、睡眠不足では分泌が減少します。

まとめると、睡眠不足では、

「食欲が亢進し、満腹中枢が満たされず、代謝は下がって、体脂肪分解は滞る状態」

に陥るのですから、鉄の意志があったとしても、ダイエットは難しくなります。

2. 自分の睡眠不足をチェックしてみよう

ここまで見てきたように、睡眠不足では、私たちの生活の質が大きく損なわれる可能性があります。

適切な対処をするための第一歩として、まずは自分の睡眠不足をチェックしてみましょう。

2-1. 適切な睡眠時間は何時間か

適切な睡眠時間には個人差があり、また睡眠の質によっても変わります。

その前提のうえですが、目安としては「7時間前後」がひとつの基準となります。

理由は、日本人では睡眠時間の平均が約7時間であり、​​睡眠時間は長くても短くても死亡リスクと関連することが男女ともに知られているためです。

【参考:睡眠時間と死亡リスクとの関連】

出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター「睡眠時間と死亡リスクとの関連について」

上図は国立がん研究センターのWebサイトに掲載されている研究からの引用です。とくに男性の場合、7時間未満の睡眠時間で、死亡リスクが上昇していることがわかります。

2-2. 睡眠不足度のチェックリスト

次に、チェックリストを使って、睡眠不足度を調べてみましょう。

以下は、大阪がん循環器病予防センター作成の睡眠時間不足度チェックです。当てはまる項目は、いくつあるでしょうか。

【睡眠時間不足度チェック】

・起床時は、音の大きな目覚まし時計が必要(あるいは、必ず誰かに起こしてもらっている)

・朝、寝床から出るまで苦労する

・目覚まし時計の音に気づかず、時々そのまま眠ることがある(あるいは、起こされてもなかなか起きられない)

・ビールなどアルコールを少し飲むとよく眠れる気がする

・週末など休みの日の前は、いつもより2時間以上長く眠る

・時々、以前より気力が無いと感じる

・細かな仕事や家事は、以前より手を抜くことが多くなった

・時々、知らないうちに居眠りをしている

・テレビを見たり、本を読んだりしているときに非常に眠くなったり、居眠りをすることがある

・電車、バス等に1時間以上乗車すると非常に眠くなったり、居眠りすることがある

・多めの昼食(お酒抜き)を取った後、いつでも非常に眠くなったり、居眠りをすることがある

・何らかの集まりや講演会、会議の最中に眠くなることが多い

・車の運転中、うとうとして途中で2、3分休憩することがある

・日中にコーヒーや紅茶、日本茶などを4杯以上飲む

出典:大阪がん循環器病予防センター「睡眠」

当てはまった項目の数を、以下に照らして確認しましょう。

【判定基準】

A.5個以下:だいたい適切な睡眠時間が確保できています

B.6~9個:睡眠量不足の傾向があり、注意力散漫になりがちです

C.10~12個:かなりの睡眠量不足で、仕事を丁寧にすることが難しくなってきます

D.13個以上:深刻な睡眠量不足の状態です

出典:大阪がん循環器病予防センター「睡眠」

[A.5個以下]であれば、問題ありません。それ以外の場合には、改善に取り組む必要があります。

とくに、[C.10~12個][D.13個以上]となれば、早期の対策が必要です。

3. 睡眠不足の原因を探ろう

現在、睡眠不足の状態にある方は、その原因について考えてみましょう。

3-1. 睡眠確保の妨げとなる点

睡眠不足の原因は、人によってさまざまですが、統計調査では、年齢・性別によって多い原因を把握できます。

下表の中で、ご自身の性別・年代の部分を確認してみてください。どのような原因のパーセンテージが多くなっているでしょうか。

出典:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」をもとに作成

3-2. 性別×年代別のトップ原因

上表のうち、性別×年代別のトップ原因をまとめたものが、以下となります。

【男性の睡眠不足の原因】

・20代:就寝前に携帯電話・メール・ゲームなどに熱中すること

・30代:仕事

・40代:仕事

・50代:仕事

・60代:その他

・70代以上:健康状態

【女性の睡眠不足の原因】

・20代:就寝前に携帯電話・メール・ゲームなどに熱中すること

・30代:育児

・40代:家事

・50代:仕事

・60代:その他

・70代以上:その他

20代では、男女ともに、スマホによる睡眠不足の傾向が顕著に見てとれます。

30代〜50代になると、男性の場合は「仕事」が原因のトップに並び続けます。男性の睡眠不足は、仕事時間との戦いといえるかもしれません。

70代以降となると、男性は「健康状態」による睡眠不足が多くなります。

腰痛や関節痛といった慢性的な身体の痛み、咳、前立腺肥大症のための夜間頻尿(男性の場合)などが増えてくるためと考えられます。

出典:大阪がん循環器病予防センター「睡眠」

一方、女性の場合は、30代「育児」→40代「家事」→50代「仕事」と、睡眠不足の原因が移り変わっていきます。

30〜40代の女性にとっては、育児や家事を、配偶者や家族でどう分担できるか?が鍵といえそうです。

4. 睡眠不足を解消する改善策─5つのアプローチ

睡眠不足を解消するためには、多角的なアプローチが必要です。ここでは以下5つの観点から、睡眠改善のアクションをご紹介します。

1. 時間を確保する
2. スマホを遠ざける
3. 睡眠を妨げる因子を減らす
4. 睡眠を促す因子を増やす
5. 自分に合うアレンジを探す

4-1. 時間を確保する

1つめの改善策は「時間を確保する」です。

先ほど、睡眠不足の原因をご紹介しましたが、多くの方が、睡眠時間の確保に悩んでいることがわかります。

具体的なアプローチを見ていきましょう。

4-1-1. ブラック企業なら転職する

もし、

「自分で睡眠不足を自覚しており、改善したいのに、勤務先の問題でそれが実現できない」

という状況であれば、勤務先はブラック企業かもしれません。

というのは、従業員の健康管理は企業の義務だからです。労働契約法において、企業には、従業員の心身の健康も含めた安全配慮が義務づけられています。

【参考:労働者の安全への配慮】

第5条 使用者は、労働契約に伴い、 労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

出典:厚生労働省「労働契約法のあらまし」

もし、勤務先がこの義務を行っていると感じるなら、転職を検討する必要があるでしょう。

【転職を考えるべき状況】

過度な残業:法定労働時間を超える残業が常態化している。

休息の不足:週休2日が保証されず、十分な休息が取れない。

健康への配慮欠如:ストレスや過労が原因での健康問題が発生している。

労働条件の不適切さ:労働契約が明確でない、または不利な条件が強いられている。

コミュニケーション不足:労働環境の改善に向けた意見が反映されない。

「とはいえ、現実的には難しい……」という声が聞こえてきそうですが、以下の図を再掲します。

出典:厚生労働省「睡眠と生活習慣病との深い関係」

睡眠不足を放置すれば、「心血管疾患 → 生命予後の悪化」まであることを踏まえ、“睡眠時間を確保できる仕事のあり方” を、見直していきましょう。

4-1-2. ワーカホリックなら自覚する

「勤務先などに強制されているわけではないが、睡眠時間を削った長時間労働をやめられない」

という場合は、ワーカホリックに陥っているかもしれません。

ワーカホリックとは、work(仕事)とalcoholic(アルコール中毒)を組み合わせた造語で、自分の健康や家庭・プライベートを犠牲にして、仕事をやりすぎる状態をいいます。

【ワーカホリックの兆候】

仕事中心の生活:仕事以外の活動に対する関心が薄れている。

休日の過ごし方:休日も仕事をしてしまい、リフレッシュの時間が取れない。

疲労の蓄積:疲れが抜けず、常に疲労感を感じている。

家族や友人との関係:仕事のために大切な人との時間が減少している。

自己評価の基準:自己の価値を仕事の成果でのみ測ってしまう。

自分の睡眠不足や疲労について、まずは明確に「自覚」をし、疾患のリスクについて把握して、行動を変えていきましょう。

以下は、長時間労働の医師に対する保健指導の資料ですが、ワーカホリックの方にとっても、参考になる部分が多いはずです。

出典:医師面接養成ナビ「健康管理 過重労働・睡眠負債による健康影響」

「気づきの心を涵養(かんよう)する」というフレーズがあります。涵養とは、自然に水がしみこむように、徐々に養い育てるという意味です。

睡眠不足を解消することの大切さを、徐々に理解して、睡眠を確保するための自律性を養っていきましょう。

4-1-3. 育児は分担する

前述の厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」では、〈30代女性の 30.9% が育児による睡眠不足〉を挙げていました。

育児の負担が1人だけに偏らないよう、パートナーや家族間で育児を分担する行動が、非常に重要です。

ここまで繰り返しお伝えしている、心血管疾患のリスク増大に加えて、本記事の前半で〈睡眠不足で不安・抑うつが強まる〉という研究報告をご紹介しました。

睡眠不足のまま、大変な育児に向き合い続ければ、不安や恐怖と関連している扁桃体が活性化して、精神的に不安定になるのも、無理はないのです。

具体的なアクションとしては、大阪府作成の100のタスクを見える化した「家事・育児シェアチェックシート」がおすすめです。

以下は一部引用です。

出典:大阪市「家事・育児シェアチェックシート」 

詳しくは「「家事・育児シェアチェックシート」を活用しませんか(大阪市)」からご確認ください。

4-1-4. 家事は時短家電を導入する

家事の時間は、時短家電を導入することで、大幅に節約できます。

近年の技術進化により、家事の負担を減らす製品が増えています。最新情報をチェックしてみるとよいでしょう。

【時短家電の例】

ロボット掃除機:掃除機掛けだけでなく、床拭きも一度にできるモデルが登場しています。

窓掃除ロボット:窓の両面やタイルなどを自動で掃除できます。

洗濯乾燥機:洗剤投入から乾燥まで自動で行うタイプでは、洗剤の計量も不要です。

電気圧力鍋:火を使わずに短時間で調理できるため、子育て中にも活躍します。

フードプロセッサー:下ごしらえの時間を短縮し、料理の効率がアップします。

食器洗い乾燥機:調理器具や食器の後片付けをする時間を大幅に短縮できます。

「家電を買うお金がもったいないから……」

と、自分で頑張り続ける方もいます。

しかしながら、ご自身を大切にして、心身に必要な睡眠時間を確保するためには、時短家電は賢く取り入れたいアイテムです。

4-2. スマホを遠ざける

2つめの改善策は「スマホを遠ざける」です。

先にご紹介した厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」では、

〈20代では男性も女性も、40%以上の人が「就寝前に携帯電話・メール・ゲームなどに熱中すること」によって睡眠を妨げられている〉

という結果が示されていました。

4-2-1. スマホで眠れなくなる理由

「スマホを触っていると、つい時間を浪費してしまい、睡眠時間が少なくなる」

と感じているかもしれません。

じつは、スマホには、意志の問題とは別に、眠れなくなるメカニズムがあります。

まず、スマホからは「ブルーライト」が発せられていることが挙げられます。

ブルーライトが目に入ると、眠気を促す睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が抑制されてしまうのです。

私たちの脳内には「体内時計」と呼ばれる仕組みがあり、体内時計は目の網膜から入ってくる明暗環境によって、体を目覚めさせたり眠らせたりしています。

寝る前にスマホを見ていると、「外が明るい→覚醒→目が覚める」という朝の状態になってしまうのです。

さらに、ゲームやSNSで興奮したり感情が高ぶったりすると、より脳内が覚醒して、寝つけなくなってしまいます。

4-2-2. 寝床でスマホを見ないと決める

睡眠不足を解消するためには、

「眠くなるまで、なんとなくスマホをいじっている」

という習慣を、一切やめましょう。

ベッドや布団の中に入ったら、スマホを見ないことをルールとします。

具体的な工夫として、以下を参考にしてみてください。

・就寝時刻の1時間前(可能なら2〜3時間前)から、スマホの画面を見ないようにする。

・寝床から手の届く場所にスマホを置かない。

・目覚まし時計を別に準備し、スマホを時計代わりにしない。

4-3. 睡眠を妨げる因子を減らす

3つめの改善策は「睡眠を妨げる因子を減らす」です。

時間を確保して、早くベッドや布団の中に入っても、なかなか寝つけなかったり、早く目覚めたりすると、睡眠不足になります。

たとえば、以下は「8時間は寝床にいるのに、眠っている時間が5時間」と睡眠不足に陥っている例です。

 

寝床に入ったら効率的に眠れるよう、睡眠を妨げる因子を減らしましょう。具体的な対策は、以下に続きます。

4-3-1. カフェイン・アルコール・ニコチン

カフェイン・アルコール・ニコチンは、どれも覚醒作用があり、深い睡眠とは逆行するものです。

カフェイン:コーヒー・紅茶・緑茶・エナジードリンク・チョコレートなどに含まれます。眠気覚ましとして使われるように、カフェインを摂取すると眠気を感じにくくなります。

アルコール:一見リラックス効果があるように思われますが、実際には深く眠れずに途中で目覚めやすくなるため、睡眠不足の原因となります。

ニコチン:ニコチンは自律神経に複雑に作用し、交感神経を刺激することがあります。喫煙者は寝付くまでにかかる時間が長くなることが報告されています。

これらは完全に避けるのが理想です。もし嗜む場合には、少なくとも就寝の数時間前までには、やめるように心掛けましょう。

量や頻度を控えめにすることも、大切です。

参考:NCNP病院「喫煙と睡眠」

4-3-2. 不安や緊張

先ほど、スマホによる脳の覚醒について触れましたが、不安や緊張があれば、これらも脳の覚醒につながります。脳や身体の活動を高める交感神経が、優位になるからです。

出典:大阪がん循環器病予防センター「睡眠」

睡眠不足を解消するためには、できる限りリラクゼーションを心掛けることが大切です。

ストレスケアのアイデアとしては、以下を参考にしてみてください。

【ストレスケアのアイデア】

自然と触れ合う:公園での散歩やガーデニングなど、自然環境に触れるとストレスが軽減されることが報告されています。

ペットと過ごす:ペットとの触れ合いは、心を落ち着け、ストレスを和らげます。

手工芸やアートに挑戦する:絵を描く・陶芸をするといったクリエイティブな活動は、心地よい集中状態を引き出し、ストレスを忘れさせます。

マインドフルネス瞑想:“今ここ”に集中し、ありのままの状態に気づく力を高めます。これによりストレスを把握し、処理する能力が高まります。

ヨガ:深い呼吸と適度な運動が組み合わされたヨガは、心と体の両方に良い影響を及ぼし、ストレスを軽減します。

ひとりの時間を作る:人々との交流は重要ですが、時には自分だけの時間を持つことも大切です。好きな本を読んだり、映画を見たりすることで、ストレスから解放されます。

日記:思いや感情を文字に起こすことで、ストレスの原因を整理し、感情の解放を促します。

笑い:お笑いライブに行く、コメディ映画を見るなどして笑うことで、ストレスが軽減されます。

食事作り:自分の手で料理を作り、食事を楽しむことも、リラクゼーション効果があります。

出典:「寝ても疲れ取れない…」9つの原因と睡眠で疲労回復する具体的な方法

4-4. 睡眠を促す因子を増やす

4つめの改善策は「睡眠を促す因子を増やす」です。

「睡眠を妨げる因子を減らす」ことと並行して実践したいのが、「睡眠を促す因子」を増やしていくことです。

4-4-1. 良好な睡眠環境

まず取り組みたいのが、睡眠環境の改善です。

「光・温度・音」の3つの要素から、整えていきましょう。

【寝室の環境を整える3要素】

:朝日を浴び、日中は明るく、夜は暗い環境を心がけることで体内時計が整います。朝はカーテンを開け、室内に光を取り入れましょう。夜は室内照明を弱くして光の量を減らし、できるだけ暗い環境で眠りましょう。

温度:室内は快適と感じられる適度な室温を心がけましょう。冬は毛布や衣服で調整するだけでなく、エアコンなどを活用し、室温を調整しましょう。ただし、乾燥に留意しましょう。寝る前にお風呂に入り一度体温を上げることで、その後に体温が下がりやすくなり、眠りにつきやすくなります。

:騒音は眠りを妨げるのでできるだけ静かな環境で眠りましょう。落ち着いた音楽を聴くと寝付きがよくなります。リラックスのために心地よい静かな音楽をかけることもよいでしょう。

出典:厚生労働省「知っているようで知らない睡眠のこと」

季節によって気温や湿度が変わる日本の環境では、布団の中の温度や湿度(寝床気候)を最適に整えることが、重要なカギとなります。

夏は湿度を上手に逃がし、冬は体を冷やさないためには、寝具の素材も工夫してみましょう。

例を挙げると、「羽毛布団」は睡眠の質を高めるために、あらためて注目されている素材です。以下に関連ページのリンクを記載しますので、お役立てください。

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4-4-2. 日中の社会的な活動

先ほど、長時間労働は睡眠不足の原因となるため、改善するためのお話をしました。

一方、「会社勤めなどの社会的な活動がない状態」も睡眠不足の原因となることを知っておきましょう。

【参考:体内時計の周期と日中の活動】

人間の概日リズムは、外界からの刺激がなくなると鈍くなることがわかっており、光のみならず、日中に活動し、社会的な刺激を受けることも24時間のリズムを強化し、良く目覚め、よく眠るためには大きな役割を果たしています。

出典:大阪がん循環器病予防センター「睡眠」

たとえば、定年退職後や子育てを終えた後は、家にこもるのではなく、社会的活動に参加したほうが、睡眠不足を解消しやすくなります。

【社会活動の例】

・自治会、町内会などの自治組織の活動

・まちづくりや地域安全などの活動

・趣味やスポーツを通じたボランティア・社会奉仕などの活動

・伝統芸能・工芸技術などを伝承する活動

・生活の支援・子育て支援などの活動

4-4-3. 適度な運動

適度な運動は、眠りにつくスピードを早めるため、習慣化を目指しましょう。

仕事や育児で、「寝床に入る時間を確保するだけで、精一杯」という方にとっては、難しく感じられるかもしれません。

ただ、せっかく寝床に入っても、入眠までに時間がかかって効率よく眠れない場合には、運動にチャレンジする価値があります。

以下は、厚生労働省のWebサイトからの引用です。

国内外の疫学研究(数千人を対象とした質問紙調査)において、運動習慣がある人には不眠が少ないことがわかっています。(中略)激しい運動は逆に睡眠を妨げますので、負担が少なく長続きするような有酸素運動(早足の散歩や軽いランニングなど)が良いでしょう。

運動のタイミングに注意を払えば、さらによい睡眠が確保できるでしょう。効果的なのは夕方から夜(就寝の3時間くらい前)の運動だと言われています。就寝の数時間前に運動によって脳の温度を一過性に上げてやることがポイントです。そうすると床にはいるときの脳温の低下量が運動をしないときに比べて大きくなります。睡眠は脳の温度が低下するときに出現しやすくなるので、結果として快眠が得られやすくなる訳です。ただし就寝直前の運動は体を興奮させてしまうので禁物です。

出典:厚生労働省「快眠と生活習慣」

ポイントとしては、以下のとおりです。

・効果的なのは夕方から夜のタイミング(就寝の3時間ほど前)

・負担が少なく長続きする早足の散歩や軽いランニングを習慣化する

・激しい運動や、就寝直前の運動は避ける

4-4-4. 眠気を促す栄養素

先にも登場した、眠気を誘う睡眠ホルモン「メラトニン」ですが、メラトニンを分泌させるには、材料となるタンパク質の摂取が有効です。

というのも、「メラトニンの前駆体はセロトニン、セロトニンの前駆体はトリプトファン(タンパク質)」という関係にあります。

前駆体とは、ある物質が生成される前の段階にある物質のことです。

“メラトニンの前駆体である「セロトニン」は、不安や緊張を軽減させる” という観点からも、タンパク質は睡眠に貢献してくれます。

タンパク質のほかには、神経を落ち着かせるマグネシウムやカルシウムも、眠気を促す効果が期待できます。

【多く含まれる食材】

タンパク質(トリプトファン):赤身肉、鶏肉、牛乳、チーズ、豆腐など

マグネシウム:アーモンド、ほうれん草、玄米、ひじきなど

カルシウム:乳製品、小松菜、ブロッコリー、小魚など

4-5. 自分に合うアレンジを探す

5つめの改善策は「自分に合うアレンジを探す」です。

ここまで、多くの人にとって効果的な可能性が高い対策をご紹介してきました。一方で、睡眠は個人差が大きいため、自分に合った方法を見つけることも大切です。

睡眠改善の基礎知識を身につけたうえで、自分の生活リズムや好みに合わせてアレンジすることで、より効果を感じられるでしょう。

以下にアレンジのアイデアを2つ、ご紹介します。

4-5-1. 短時間の昼寝(パワーナップ)

パワーナップとは、コーネル大学の社会心理学者ジェームス・マースが提唱した概念で、10〜20分程度(長くても30分以内)の昼寝のことです。

〈NASAの研究によると、パイロットが26分間眠った場合、昼寝をしなかったパイロットに比べて覚醒度が54%向上し、仕事のパフォーマンスが34%向上した〉

とのことで、最終的にNASAは、深い眠りに落ちるのを避けるため、10~20分の仮眠を推奨しています。

参考:verywell「The Overwhelming Benefits of a Power Nap」

米国企業を中心にパワーナップを導入する企業が増え、日本国内でも導入する企業が増えています。

参考:三菱地所「仮眠室を使用し、従業員による仮眠の効果検証実験をスタート」

パワーナップは、それぞれの生活環境や体質によって相性がありますが、試してみる価値がある対策といえるでしょう。

4-5-2. 寝る前のルーティン

寝る前には、いつもと同じ行動パターンをとり、習慣化した環境で就寝すると、スムーズに入眠できる人もいます。

習慣化のテクニックとして「儀式」を作るという手法があります。夜のマイ儀式を作って、チャレンジしてみましょう。

【夜の儀式の例】

環境の整備:寝室の換気をし、エアコンや加湿器を快適な室温・湿度にセットします。寝具を整えて、心地よく眠れる準備をしましょう。

リラクゼーション:深呼吸や瞑想、軽いストレッチで心身を落ち着かせます。リラックスするための音楽を聴くのも効果的です。

デジタルデトックス:スマートフォンやコンピュータの使用を控え、睡眠の質を損なうブルーライトの影響を避けます。

読書:心を落ち着かせる本を読むことで、心地よい眠りへと導かれます。物語に没頭することで、日々の悩みから解放されます。

温かい飲み物:カフェインを含まないハーブティーや温かいミルクを飲むことで、体がリラックスし、眠りやすくなります。

アロマテラピー:就寝時刻が近づいてきたら、アロマオイルを焚いて、香りを嗅ぐようにします。ラベンダーやカモミール、ベルガモット、イランイランなどが眠りを誘うアロマとして知られています。自分に合う香りを探してみましょう。

5. まとめ

本記事では「睡眠不足」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

睡眠不足が続くと、以下の危険性が強まります。

・心血管疾患のリスクを高める

・不安・抑うつが強まる

・ダイエットが難しくなる

睡眠不足を解消する改善策として、5つのアプローチをご紹介しました。

1. 時間を確保する
2. スマホを遠ざける
3. 睡眠を妨げる因子を減らす
4. 睡眠を促す因子を増やす
5. 自分に合うアレンジを探す

睡眠時間を確保できるようになってきたら、次に取り組みたいのが「睡眠の質」の向上です。睡眠の質を上げることで、心身の健康維持が期待できます。

睡眠の質に関しては、以下の記事を参考にしてみてください。

寝具で睡眠の質は変わる?研究結果をもとに最適な寝具の特徴を解説

「寝ても疲れ取れない…」9つの原因と睡眠で疲労回復する具体的な方法

よりよい睡眠によって、体も心も健康に、充実した毎日を送っていきましょう。

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